潜水後、減圧症特有の自覚症状が出現したもの、または自覚症状がなくても診察所見に異常を認めたものを減圧症と診断します。潜水後、心臓の超音波ドップラー検査において静脈内気泡を観察できることがありますが、自覚症状または診察所見がなければ静脈内気泡だけもって減圧症とは診断しません。
意識障害や膀胱直腸障害などを伴う重症の減圧症では、診察時間を費やすことなく早急に高気圧酸素治療を開始し、診察は高気圧酸素治療装置内で行います。
痛覚や温度覚が低下していることが多いので、ルレットや氷(保冷剤)で検査します。触覚が低下していることは少ないため、皮膚の感覚を筆で検査しただけでは知覚障害を見落とします。筋力低下を訴えない患者でも、徒手筋力テストで評価すると異常を認めることが多々あります。自覚症状が軽度であっても神経学的な他覚所見を認めることは多いので、十分注意を払って診察する必要があります。
ほとんどの減圧症は水深10m以深に潜水したときに生じますが、潜水深度が浅いからといって完全に除外してはいけません。多くのダイバーがダイビングコンピューター(潜水可能な水深や時間を表示する機器)の表示に従っていても減圧症には罹るため、指示に従った潜水プロフィールであっても減圧症を否定してはいけません。
減圧症の症状を関節痛・筋肉痛とだけ認識している医師が多く、神経学的診察がほとんど行われていないため中枢神経障害を伴う減圧症は見逃されがちです。
めまい・難聴を伴う減圧症と外リンパ瘻との鑑別については慎重でなければいけません。外リンパ瘻に対して高気圧酸素治療は禁忌です。
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