ドクター山見 公式ウェブサイト:ダイビング医学・潜水医学 diving medicine 減圧症(decompression sickness)  
    原因&誘因
 スキューバダイビングでは、通常、空気ボンベを使用して潜水します(酸素分圧の高いナイトロックスボンベやヘリウムガスを混合したものもあります)。空気の約79%は窒素(不活性ガス)であるため、潜水中、圧力勾配に応じてこの窒素が身体に溶解します。減圧(浮上)の際、溶解していた窒素が気泡化して症状が出現したものが減圧症です。ほとんどの減圧症は、水深10m以深に潜水したときに起こります(水深10m以浅でも発症したケースはあります)。最大の誘因は、深く長く潜ることです。潜水深度または潜水時間に比して、減圧時間が短いほど発症率は高くなります。減圧症の誘引には、肥満、高齢者、疲労、脱水、生理中または生理直前などがあります。誘因になる行為(行動)には、潜水直後の激しい運動、潜水後の飛行機搭乗や高所移動(低圧環境に曝される)があります。
減圧症を発症しやすくすると考えられる因子
以下の項目は、減圧症発症にアクセルとして作用するも因子です。該当するものにチェック。
40歳以上 40歳以上ならチェック
肥満 BMI(ボディー・マス・インデックス)が25以上ならチェック
注:BMI=体重Kg÷身長m×身長mで求めることができます。
BMI:一覧表
古傷 古傷(怪我)の既往または画像診断等で障害があればチェック
減圧症の既往 治療をしていてもしていなくても診断がついていたらチェック
潜水ブランク 最近1ヶ月以上ダイビングをいていなかったらチェック
飲酒 前夜ビール1本または日本酒1合以上飲んでいたらチェック
脱水 飲酒がチェックまたは病的な下痢や嘔吐があればチェック
疲労 自覚的に疲労があればチェック
体調不良または
病気
自覚的に体調不良または病気があればチェック
月経前 月経前3日間(72時間)以内はチェック
月経中 月経中であればチェック
水温 20度未満はチェック
冷え 水温20度未満のダイビングはチェック
ウェットスーツでのダイビングは水温25度未満であればチェック
水深30m以上 水深30m以上のダイビングはチェック
3本/日以上 1日3本以上ダイビングしたらチェック(水深6m以上かつ潜水時間20分以上を1本とカウント)
激しい運動 ダイビング中、息切れしたと感じたらチェック
潜降・浮上の
繰り返し
ダイビング中、極端な潜降・浮上を繰り返したという記憶があればチェック
急浮上 コンピュータのスローの指示を無視した場合チェック
一時的に(10秒以内)表示されただけであればチェックなし
エアー供給不良 エアーの供給が少なく苦しいと自覚した場合にチェック
潜水直後温浴 身体が冷えていると感じているうちに熱いと感じるシャワ
ーやお風呂に入った場合はチェック 
潜水後の運動 通常より運動をしたと感じて、そのための疲労感があればチェック
高所移動 ダイビング後12時間以内に標高400m以上を移動していればチェック 
航空機搭乗 ダイビング後18時間以内に航空機に搭乗していればチェック
が少ないほうがよい。数値はあくまで目安。  合計:

減圧障害の発生とダイビングプロフィール


    発生頻度
 わが国では、ダイビングライセンスと呼ばれるCカード(certification card:認定証)を取得しているレジャーダイバーは100万人以上といわれています。継続的にダイビングしている人口は30〜40万人と推察されます(職業ダイバーは約4万人)。近年、潜水障害と潜水死亡の発生は圧倒的に職業ダイバーよりレジャーダイバーに多い傾向があります。潜水障害は20〜30歳代が約90%を占めていますが、潜水死亡は約半数が40歳以上です。
ダイビング中の死亡は年間約20〜40名で、死亡したケースを調べると、潜水の途中に独りになって死亡したケースが約40%、最初から単独で潜水していたケースが約30%、合計約70%のダイバーが目撃者なしの状況で死亡しています。
レジャーダイバーを対象とした調査では約25%が何らかの潜水障害にかかった経験があり、耳、副鼻腔、歯の障害、減圧症の順に多い傾向があります。
  潜水において、生命を脅かすことの多い障害は、溺水、動脈ガス塞栓、減圧症があり、後遺症を残しやすい病気には、動脈ガス塞栓、減圧症、外リンパ瘻があります。

減圧症に罹る確率

  減圧症にかかったことのあるダイバーは、レジャーダイバーでは1.2%、インストラクターでは9.0%です。全体では2.2%ということになります。
  減圧症に罹患する確率は、レジャーダイバーでは、およそ14,000ダイブに1回、プロダイバーでは17,000ダイブに1回です。平均すると16,000ダイブに1回ということになります。ただし、この調査はダイビング活動をしているダイバーを対象にして行った調査であり、減圧症罹患後にダイビングをやめてしまったダイバーは含まれておらず、減圧症に罹患しても医師を受診しないケースもあるため、実際の罹患者(罹患確率)はもっと高いと考えます。
   

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